明らかに異常なタイミングで異常な量の汗が出る症状は、多汗症だと考えられます。「どうすれば多汗症を改善できるの?」と悩んでいる方がとても多いでしょう。
自分だけ大量に汗をかくので、人目が気になってしまいます。多汗症は治療をすることで改善できまる疾患です。さまざまな改善方法がありますので、ここではそれぞれ詳しくご紹介します。
多汗症ってどんな病気?
多汗症は、汗の分泌量が異常に増えてしまう疾患のことです。じっとしているのに汗が溢れ出てきたり、脇や手のひらだけ異常なほど汗をかいてしまったりなどの症状が出ます。
多汗症はいくつか原因が考えられていますので、まずは代表的なものをチェックしていきましょう。
ストレス・緊張・不安による多汗症
精神性多汗症とも呼ばれるこのタイプは、人前に出るときだけでなく「汗をかいたらどうしよう」という不安が原因で汗をかきます。
「汗が出そう、どうしよう」と思うほど汗が出るので、負のループに陥ってしまうことも少なくありません。
ストレスや不安を感じると、交感神経が優位になるので、発汗量が増えてしまうのです。精神性多汗症の方は、なぜ汗をかいてしまうのか原因を検査しても見つからないことが多いため、原発性多汗症とも呼ばれます。
他の病気が原因で起こる多汗症
一方で他の病気が原因で症状が出ているものを続発性多汗症と呼びます。たとえば次の疾患が原因で多汗症になることが多いです。
- 循環器疾患
- 呼吸不全
- 悪性腫瘍
- 甲状腺機能亢進症
- 褐色細胞腫
- 末梢神経障害
- 不安障害
これは一例ですので、他にも原因となる疾患はあります。続発性多汗症の場合は、多汗症を引き起こす原因となる疾患をまずは治療していくことが大切です。
ホルモンバランスの乱れによる多汗症
とくに女性は、ホルモンバランスが乱れることで多汗症の症状が出やすくなっています。生理前や妊娠出産、更年期など、女性にはホルモンバランスが変化するイベントがたくさんあるものです。
ホルモンバランスの変化によって体がほてったり、いつもより暑がりになったりすることも少なくありません。ちょっとしたことで汗をかいてしまうこともあります。
食生活の乱れによる多汗症
食生活の乱れ、というよりは食事が原因で起こる多汗症があります。それが味覚性多汗症です。辛いものやスパイスの効いたものを食べると汗が出る方は、この味覚性多汗症だと言えます。
食べ物によって交感神経が刺激されることで、多汗の症状が起こります。
多汗症の種類
多汗症は、どこから汗が出るのかによって呼び方が決まっています。
腋窩多汗症(えきかたかんしょう)
脇から汗が大量に出る方は、腋窩多汗症です。体を動かすと脇汗をかきやすいという方から、じっとしても脇だけ汗びっちょりになる方まで症状は多岐にわたります。
脇汗パットをつけても通り抜けて服に汗じみができるなど、とても人目が気になってしまう症状です。
手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)
手のひらから汗が大量に出るもので、汗が出る量に応じてレベル1~3まで分類されています。レベル1だと手のひらが少し湿る程度ですが、レベル3になるとぼたぼたと滴るくらいの汗をかくことが特徴です。
頭部顔面多汗症
頭や顔から大量に汗をかきます。少し体を動かしただけでシャワーを浴びたかのような量をかくこともあり、周りからの視線がとても気になってしまう多汗症です。
足蹠多汗症(そくせきたかんしょう)
足の裏に汗を多くかきます。裸足で歩くとすべって転んでしまったり、歩いたところに足跡がついてしまったりなどの症状が特徴的です。
足に汗をかくとニオイの原因ともなりやすいことから、靴選びに苦労することもあるでしょう。
全身性多汗症
脇だけでも頭だけでもなく、全身から大量の汗をかく場合は全身性多汗症です。部位によって汗の程度は異なるものの、基本的にはどこからでも汗をかきます。
汗かきと多汗症の違い
「自分はただの汗っかきなのかな?」と思っている方もいるでしょう。そもそも人によってかく汗の量が違うので、汗っかきと多汗症を見極めづらいところはあります。
しかし汗かきと多汗症は、明確な症状の違いがあるものです。
汗かきは体を動かしたときにしか汗をかきません。ところが多汗症は、じっと座っているだけでもぼとぼと滴るほどの汗をかくことがあります。
暑いところだと汗をかきやすくなりますが、温度に関係なく汗をかくこともあるほどです。
多汗症を改善するなら
多汗症を改善したいと思ったら、できるだけまずは医療機関を受診してください。他の疾患が原因で多汗症の症状が出ていないかを検査してもらいましょう。
もしここで何か見つかったら、その疾患の治療を始めます。何もなければ多汗症の治療を始めましょう。
医療機関を受診しなくても市販で塩化アルミニウム液や飲み薬を買って治療はできますが、どうしても疾患の検査はできません。
10数年前までは多汗症を診てくれる医療機関は多くありませんでしたが、近頃では多くの医療機関で診察してくれます。
多汗症を改善するためには、何か行動しないと状況は変わりません。病院の診察室で汗が出たらどうしようと不安になる気持ちも分かります。親に知られたくないと思う気持ちも分かります。
ただ、万が一なにか疾患があったときのことも考えて、医療機関を一度でも良いので受診しましょう。市販では貰えない飲み薬もあります。抗不安薬なんかは病院でしか貰えない代表的なお薬です。
多汗症治療によく使われるグランダキシンやプロバンサインも処方箋がないと貰えないので、より良い治療を受けるためにも医療機関の受診をおすすめします。
多汗症を改善する方法
多汗症を改善する方法にどのようなものがあるのかをご紹介します。改善方法にはたくさんの種類があるので、自分の症状に合わせて選んでみましょう。
それぞれの改善方法の詳細をもっと見たいという方は、「あわせて読みたい」で紹介しているブログ記事をぜひ参考にしてください。こちらでより詳細に解説しています。
多汗症を改善する方法①:飲み薬
飲み薬は多汗症を改善させる基礎となる治療です。自律神経を整えて、汗をかきにくい状態に改善していきます。
他にも交感神経のはたらきを抑えて汗を抑えるものや、不安を取り除くことで精神性発汗を改善するお薬などもあります。
多汗症を改善する方法②:イオントフォレーシス
水道水に電気を流し、そこに手足をつけることで汗を抑える改善方法です。電気を流すことで発生した水素イオンが汗腺を塞いでいくことで、少しずつ汗が減っていきます。
イオントフォレーシスは週に1~2回治療を行う必要があり、医療機関に通うのが大変だと言われる方も多いです。そのような方は自宅用の機器を購入して家でやるのも良いでしょう。
多汗症を改善する方法③:塩化アルミニウム液
塩化アルミニウム液は、汗腺にはたらきかけて汗が出ないようにしてくれます。汗が気になるところに1~2週間続けて使うことで、少しずつ汗が出にくくなるものです。
ある程度の効果が出てきたら毎日ではなく週3回程度の使用でも改善効果が見られます。しかし使用を止めると再び汗が出てくるため、基本的には継続的に使用しないといけません。
使用を止めると汗がまた出てしまうものの、使っている限りは汗が止まりますし、市販でも買えて値段もそこまで高くないのですぐに治療を始められることが魅力です。
多汗症を改善する方法④:ボトックス注射
交感神経のはたらきを抑えるボツリヌス毒素を注射することで、汗を抑える改善方法です。1回注射すると汗止めの効果が4~9か月ほど続くため、持続的な効果を求める方から人気を集めています。
多汗症を改善する方法⑤:交感神経遮断術
とくに手掌多汗症に対して高い改善効果を発揮する治療方法です。手術によって交感神経を取り除くことで、汗が出ないようにします。
傷跡が残ること、そして代償性発汗といって汗を止めた部位以外のところから発汗が増えるデメリットがあることが特徴です。
多汗症を改善する方法⑥:ミラドライ
傷跡を残さずに腋窩多汗症を半永久的に改善できる方法です。マイクロ波を皮膚の上からあてて汗腺を破壊します。
1度の治療で汗腺の約70%を破壊できることが特徴です。
多汗症を改善する方法⑦:ビューホット
脇に極細の針を刺し、針先からラジオ波を出して汗腺を破壊します。こちらも半永久的な改善効果が期待できますが、針の跡が数か月は残るためミラドライと比べると人気が劣る治療方法です。
多汗症は改善できる
原因も分からず多汗症になってしまった方がほとんどでしょう。どうすれば治るのか、どうすれば汗を気にせず生きていけるのか不安に思っている方は多いです。
多汗症の改善方法には塩化アルミニウム液やイオントフォレーシス、ミラドライなど多くの種類があります。
汗が出る部位によって、どの治療方法が使えるのかが変わってくるので、まずは自分に合った改善方法を探してみてください。
まずは治療を知ることからスタートしてみましょう。そして治療を始めれば何かしらの改善が見られるはずです。