多汗症の治療

多汗症治療の飲み薬を紹介!処方薬と市販薬を網羅

多汗症は手術で汗腺を取り除いたり、塩化アルミニウム液などの外用剤を使ったり、飲み薬で汗を抑えたりしながら症状をコントロールしていきます。

飲み薬は手術と比べると安価であり、しかもいざというときに使うことで多汗症の発作を抑えてくれるお薬もあるものです。

自分が多汗症であるとわかったら多くの方は飲み薬での治療を始めます。一般的にどのような飲み薬があるのかをご紹介していきましょう。



多汗症治療における飲み薬の扱い

原発性局所多汗症診療ガイドラインで「内服療法は多汗症に有効か? 」という項目では、多汗症の部位ごとに以下のように推奨度が記載されています。

  • 掌蹠多汗症:C1
  • 腋窩多汗症:C1~C2
  • 頭部顔面多汗症:B~C1

C1とかBとかって何?と思うかもしれません。ガイドラインでは治療の推奨度がAからDまでランク分けされているのです。

推奨度による違い
  • A:行うよう強く勧められる
  • B:行うよう勧められる
  • C1:行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない
  • C2:根拠がないので勧められない
  • D:行わないよう勧められる

C1やC2に分類されている手のひらや足の裏、脇の多汗症には、飲み薬を使ってもよいけども根拠がない、という認識です。頭や顔の多汗症であればB~C1になっているので、飲み薬での治療が勧められます

もちろん手や足であっても飲み薬がまったく効かないわけではありません。

手や足の多汗症の方は塩化アルミニウム液やイオントフォレーシスが推奨度Bの「行うよう勧められる」となっていますので、こちらをぜひお試しください。

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多汗症治療に用いられる飲み薬

飲み薬に使われるのは主に以下のものです。

  • プロ・バンサイン
  • グランダキシン
  • カタプレス
  • 漢方薬

それぞれにどのようなお薬があるのかをご紹介します。

抗コリン薬

抗コリン薬とは自律神経の伝達物質として働く、コリンの働きを抑えるお薬のことです。汗は交感神経が活発になることで出る仕組みになっているため、抗コリン薬で自律神経の働きを抑えてあげれば汗も出にくくなるというわけです。

抗コリン薬に分類されるお薬は山のように存在しますが、その中でも唯一、多汗症に適応を持つものがプロ・バンサインです。

プロパンテリン臭化物という成分を使ったお薬で、もともとは胃潰瘍や腸炎の治療に使われていました。

顔や頭の多汗症の治療ではカナダの多汗症ガイドラインにおいて第一選択薬となっています。

プロ・バンサインは飲み続けるお薬ではなく、「会議だから絶対に汗をかけない」とか、「文化祭の発表があるから」など、ここぞというときに使うイメージのお薬ですね。

私も使用したことがありますが、多汗症の発作が起きても汗の量が20~30%くらに抑えられているような感じでした。けっこう効きます。

「そんなに効くなら、毎日ずっと飲んでいたほうがいいじゃん」と思う方もいるでしょう。私も実際に飲み始める前はそう思っていました。

しかし口の渇きや便秘の副作用がけっこうあるので、常用するには向いていないお薬なのです。

いざというときのお守りとして持っておくと安心なお薬と言えます。

プロ・バンサインは以下に該当する方には禁忌となっているため使えません。

  • 緑内障がある方
  • 前立腺肥大症による排尿障害がある方
  • 重篤な心疾患がある方
  • 麻痺性イレウスがある方

 

グランダキシン

グランダキシンは、自律神経調節薬に分類されているお薬です。トフィソパムという成分を使っており、交感神経や副交感神経のバランスを改善するために使用されます。

本来なら交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで体の機能を調節しているのですが、副交感神経が活発になりすぎると汗をかきやすくなってしまうのです。

そこでグランダキシンが程よいバランスに自律神経を整えてあげるわけですね。自律神経失調症や更年期障害などの治療にも使われています。

副作用としては眠気が出やすいことが挙げられるでしょう。がっつり眠気が来るというよりは、軽く眠くなる感じです。

カタプレス

カタプレスは主に高圧薬として使われており、主成分としてクロニジン塩酸塩が含まれています。

血管を広げることで血液の通りをよくして血圧を下げるものです。こちらは多汗症への保険適応がないものの、多汗症の症状を抑えられたという報告がされています。

万人に効くわけではなさそうですが、人によってはかなり効くようです。また頭や顔の多汗症だけでなく手や足、脇などの局所多汗症にも有効だとされています。

漢方薬

漢方薬は汗をかきやすい体質にアプローチして、改善していくお薬です。その人の体質に合わせて使っていくので、いくつかの種類が使われています。

  • 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

などのお薬がメジャーでしょう。漢方薬のうち第一選択薬として治療に使われるのは防已黄耆湯です。

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体の表面に水がたまると汗をかく、と漢方では考えられており、この水を防已黄耆湯が外へ出してくれます。

多汗症に使われる漢方薬については、以下の記事でどのような体質にどの漢方薬が合うのかを詳しく解説していますので、こちらを参考にしてみてください。

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まとめ

多汗症の治療にはプロ・バンサインやグランダキシン、漢方薬などが使われます。中でもプロ・バンサインは強力に汗を止めてくれるので、お守りとして持ち歩いていると心強いですよ。

プロ・バンサインを持っているという安心感によって、多汗症の発作も落ちついてくれるかもしれません。

グランダキシンや漢方薬で汗をかきにくい体に近づけつつ、どうしても汗をかきたくないときにプロ・バンサインを利用するのがメジャーな治療方法です。

 

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