「手汗のせいで紙がぐしゃぐしゃになる」
「手が触れるのが気になってアルバイトもできない…」
汗は自分の意思ではまったくコントロールできないので、人よりも多くの汗をかくことで困る場面、恥ずかしい場面がいくつも出てきますよね。
手のひらに大量の汗をかくことを、手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)といいます。この記事では手掌多汗症の治療として一般的に行われている方法を詳しくまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
手掌多汗症の治療方法
基本的な治療方法に関しては、日本皮膚科学会が出している「原発性局所多汗症診療ガイドライン」に記載されています。
ただこちらのガイドライン、医療の専門家が読むようなものなのでやや読みにくく、文章も長いのが難点です。
というわけで、ここではわかりやすく噛み砕いて説明していきますね。
手掌多汗症の治療は以下の順で進めていくことが基本となります。
- 塩化アルミニウム液
- イオントフォレーシス
- ボトックス注射
- 交感神経遮断術など
塩化アルミニウム液とイオントフォレーシスはどちらから始めても構いません。また両方を一気に進めていくのも問題ありません。
この他に内服薬の使用や神経ブロック、レーザー治療などもありますが、上記の4つの方法を用いて治療を進めていくことが基本です。
塩化アルミニウム液
手掌多汗症の治療は、まず塩化アルミニウム液、もしくはイオントフォレーシスを使って進めていきます。
イオントフォレーシスは週に1~2回通う必要があり、しかも治療を行っている医療機関を探す手間もあるため、塩化アルミニウム液のほうが始めやすいという意味で、治療としてはかなりお手軽でしょう。
手掌多汗症の場合は塩化アルミニウム液での治療が推奨度Bの「行うよう勧められる」となっているので、汗止め効果も期待できます。
塩化アルミニウム液の効果
塩化アルミニウム液は汗腺にフタをして汗を抑えると考えられています。また近頃ではアルミニウムが汗腺にダメージを与えることで、構造を変化させ、汗を止めているとも考えられており、継続的な使用が大切です。
塩化アルミニウム液がどれくらいの方に効果があるのかを調べた研究では、手掌多汗症の方に30~40%の塩化アルミニウム液を使ったところ、60%の方で汗の症状が改善したとの報告がありました。
60%という数字を多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれですが、使用した人すべてに効果が出るものではない、というのは確かです。
もともと塩化アルミニウム液は効く人と効かない人とがいるので、手掌多汗症の場合はその差が大きいと言えそうですね。
塩化アルミニウム液の費用
1本1,000~2,000円で購入可能です。
1本買えば2~3か月は使えるため、価格の割に長期にわたっての治療が可能となります。
塩化アルミニウム液はどこで買える?
多汗症治療を行っている医療機関、薬局、ネットで購入できます。
漢方薬局に置いてあることも多いですね。市販やネットで買う場合は「オドレミン」という商品がメジャーとなります。
ただしオドレミンの濃度は13%とそこまで高いものではないので、より治療効果を出したい方は医療機関で貰う方がよいでしょう。
医療機関のものは20~30%で調整されていることが多いです。
イオントフォレーシス
イオントフォレーシスも、手掌多汗症の治療方法ではとてもメジャーなものです。
塩化アルミニウム液は刺激が強く、人によって湿疹ができてしまうこともありますが、イオントフォレーシスは副作用が出にくいので治療を続けやすいことが特徴となります。
塩化アルミニウム液と同じく推奨度Bの「行うよう勧められる」に該当する治療方法なので、手汗治療の第一歩として始めるのに適しているでしょう。
欧米ではイオントフォレーシスが多汗症の一般的な治療方法として認識されているそうです。
イオントフォレーシスの効果
イオントフォレーシスはすぐに汗止めの効果が出る治療方法ではありません。トータルで20回ほどは治療を行う必要があります。
早い方で治療開始3~4回目には効果が出る方もいますが、6回、7回と治療を続けてもなかなか効果が出ない方もいるため、効果が出るまでの期間は個人差が大きいです。
イオントフォレーシスの費用
イオントフォレーシスは保険適用です。3割負担の方ですと約800~1,000円で1回治療を受けられます。
20回治療を受けるとなると16,000~20,000円ほどかかる計算ですね。
イオントフォレーシスはどこで受けられる?
多汗症治療を行っている医療機関で受けられます。お近くの病院で実施しているか調べてみてください。
またイオントフォレーシスの治療を自宅でも受けられるように、家庭用のイオントフォレーシスの機器も販売されています。
週に1~2回通うのは時間的に難しいことも多いと思いますので、家庭用のイオントフォレーシスも検討してみてください。
ただし家庭用のものは、医療用のものよりも電流が小さいため、医療用と比べるとどうしても治療効果が落ちてしまいます。
ボトックス注射
ボトックス注射は、ボツリヌス菌の毒素がアセチルコリンの働きを抑える働きを活かして汗を止める治療方法です。汗は交感神経の働きが活発になり、アセチルコリンが分泌されることで出ます。
そのためアセチルコリンの働きを抑えれば汗も出なくなるわけです。
ボトックス注射の効果
ボトックス注射はもともと、目の周りがこわばってしまう眼瞼痙攣や斜視の治療に使われていました。美容クリニックではシワ取り注射としても使われています。
ボトックス注射を手のひらに打ったグループと、代わりに生理食塩水を打ったグループとを比べたところ、ボトックス注射をしたグループで優位に汗の量が減ったとの報告があります。ボトックス注射をしたすべての方で汗の量が減ったため、高い汗止め効果が期待できるでしょう。
ボトックス注射の費用
ボトックス注射は両手で4~6万円が相場です。医療機関によって価格が違う他、保険が適応になるかどうかでも費用が変わります。
ボトックス注射はどこで受けられる?
多汗症の治療を行っている医療機関、もしくは美容クリニックで受けられます。一般的な皮膚科だとボトックス注射をやっていないことの方が多いので、確認してから受診しましょう。
https://takansyo.net/botox/
交感神経遮断術
交感神経遮断術は、汗を出す大元の原因となる交感神経を除去することで、汗を出にくくするものです。
手掌多汗症の場合はこの交感神経遮断術によってほぼ100%、汗が止まりますので、最終手段のち療法として選ばえることが多いです。
交感神経遮断術の効果
交感神経がなければ汗は出ませんので、手術をすればほぼ100%、汗が止まります。
塩化アルミニウム液もイオントフォレーシスも効かなかった方、一時的ではなく根本的に手汗を抑えたい方は交感神経遮断術の治療を候補に入れてみましょう。
ただし代償性発汗によって脇や足、顔の汗が増えてしまうリスクがあるので、十分にデメリットについても考慮した上で手術を受けることが重要です。
交感神経遮断術の費用
保険適応にならない場合は30~40万円、適応になる場合は3割負担の方で10~15万円くらいが相場です。
手掌多汗症の手術は保険適応となるため、10~15万円で見ておくとよいでしょう。
交感神経遮断術を受けるには?
多汗症治療を行っている医療機関や美容クリニックで手術を受けられます。
飲み薬を使って多汗症を治療
アセチルコリンの働きを抑える抗コリン薬や、精神的に落ち着かせる抗不安薬、自律神経の働きを正常に戻していくお薬なども手掌多汗症の治療に用いられます。
ただし飲み薬での治療は、手掌多汗症の場合「行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない」とされる推奨度C1に分類されているため、飲み薬だけでの治療は現実的ではありません。
上に挙げた塩化アルミニウム液やイオントフォレーシスなどと合わせて飲み薬の治療も行っていくのが一般的です。
まとめ
手のひらの汗は、塩化アルミニウム液やイオントフォレーシスでの治療をまず行ってみましょう。長期間にわたって汗を抑えたい方はボトックス注射をやってもよいですね。
永続的に汗を止めたい倍は交感神経遮断術による治療がもっとも有効です。また飲み薬での治療も合わせて行うことで、汗を抑えることができます。
それぞれの治療方法にメリットやデメリットがありますので、自分に合う方法で汗を抑えていきましょう。