多汗症はれっきとした疾患の1つであるにもかかわらず、すべての治療を保険適用で受けられるわけではありません。
意図せず滴る汗のせいで、日常生活すらままならなくなることもあります。保険が使えるだけで多くの方は3割負担になるので、金銭的負担が大きく減りますよね。
私も多汗症患者の1人なので、保険が使えない治療があることに疑問を感じるものの、探してみると意外と保険適用の治療があることに気がつきました。
どの治療なら保険適用になるのか、適用するための条件は何なのかなどをここでは詳しくご紹介します。
それぞれの治療がどこに行けば受けられるのかも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
保険適用になる?多汗症治療の種類
多汗症の治療方法には、多くの種類があります。10数年前くらいはまだまだ多汗症の認知度が低く、治療できる医療機関すらほとんどない状態でした。
そう考えると、近頃では多汗症の治療がとてもしやすい世界になったとも言えます。
さまざまな治療方法がある中、どれなら保険適用になるのかを表にまとめてみたのでご覧ください。
多汗症治療の種類 | 保険適用になるか |
飲み薬 | △ |
塩化アルミニウム液 | ☓ |
イオントフォレーシス | ◯ |
ボトックス注射 | △ |
交感神経遮断術 | ◯ |
ミラドライ | ☓ |
ビューホット | ☓ |
ウルセラドライ | ☓ |
保険適用になるものは飲み薬とイオントフォレーシス、ボトックス注射、そして交感神経遮断術です。その他の治療は残念ながら保険適用になりません。
ではそれぞれの治療方法について、詳しく見ていきましょう。
飲み薬
多汗症治療に用いられる飲み薬には、主に次のようなものがあります。
・漢方薬
・グランダキシン
・プロバンサイン
これらのものは、すべて保険適用で処方してもらうことが可能です。内科や皮膚科で処方してもらえます。
私たちが普段行っているような医療機関で処方してもらえるので、保険適用になるのは当たり前と言ったら当たり前ですね。
ただしカタプレスやポラキスなどは、適用症状に多汗症が含まれていないので、保険適用外となります。保険が使える飲み薬は、多汗症に使えると国が認めているお薬のみです。
保険適用にはなりませんが、処方薬と似たようなお薬の一部は、市販でも購入できます。
塩化アルミニウム液
塩化アルミニウム液は、残念ながら保険適用にはなりません。
保険適用で処方してもらうためには、「このお薬は保険で処方してもOKですよ」と許可を得なければいけません。しかし塩化アルミニウムは、この許可がなく薬価収載がされていないため、現状は保険適用にならないのです。
そのため医療機関が自分で作った塩化アルミニウム液が処方される流れになっています。
塩化アルミニウム液は、多汗症治療を行っている皮膚科で貰うことが可能です。保険適用にはなりませんが、市販でも手に入れられます。
イオントフォレーシス
イオントフォレーシスは、保険適用で受けられる治療方法です。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」には次のように記載されています。
なお保険適用になるのは、医療機関でイオントフォレーシスを行った場合のみです。自分でイオントフォレーシスの機器を個人輸入した場合は保険適用となりません。
ボトックス注射
ボトックス注射は、保険適用になる場合とならない場合とがあります。ここで「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」の記載を見てみましょう。
ボトックス注射が保険適用になるのは、重度の腋窩多汗症のみです。重度ではない腋窩多汗症や、その他の部位の多汗症に使う場合は保険適用となりません。
脇汗の治療にしか保険適用にならないこと、そして重度でなければダメなことには注意が必要です。
重症かどうかは、次の基準で判断できます。
・発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。
・発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。
・発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
・発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。
このうち③か④に該当する方は、重症の腋窩多汗症ですので保険適用でボトックス注射を受けられます。
なおボトックス注射は、美容クリニックや皮膚科で受けられる治療です。
交感神経遮断術
交感神経遮断術(ETS)は、1996年から保険適用になりました。内視鏡下で交感神経を取り除く手術です。
傷跡は2~3mm程度残ります。また代償性発汗といって治療した部位以外の場所から発汗量が増えることが多いので、交感神経遮断術を行う場合はじっくりとメリット・デメリットについて考えなければいけません。
美容クリニックや皮膚科で受けられます。
ミラドライ・ビューホット・ウルセラドライ
ミラドライやビューホットなどはすべて保険適用外です。
交感神経遮断術は傷跡が残ったり代償性発汗があったりデメリットも大きい中、とくにミラドライは傷跡が残らず副作用も少なくなっています。
治療方法としては選択肢の1つにしやすいのですが、保険が使えないため完全に自費治療です。ただし自費でも受ける価値があると自信をもって言えるほど、高い治療効果を発揮してくれます。
保険適用になる多汗症治療は意外と多い
多汗症の治療は保険適用外になるものもありますが、意外と適用になるものもあります。
保険適用外となる塩化アルミニウムは、そもそもお値段が安いので1本1,000円ほどあったら購入できます。濃度が濃いものでも1本2,000~3,000円です。1本で1か月は使えるので、コスパは悪くありません。
またミラドライやビューホットのような治療も、保険適用外ではありますが嬉しいことに医療費控除の対象です。治療にかかった費用から10万円を引いた金額が控除の対象になります。
多汗症治療は保険適用になるかで選ぶのもありですが、効果とデメリットを加味して本当に納得できる治療を行うことが一番大切です。