いきなりですが、私、実は多汗症です。多汗症って何?どんな病気?って思う方もいるかもしれません。1つ間違いないのは、多汗症はただの汗っかきとはまったくの別物であるということ。
私が多汗症になったのは高校2年生のとき、当時16歳でした。青春真っ只中の色恋多い時期に突然発症してしまった多汗症。
発症した当時から今まで、多汗症によってどのような症状に苦しめられたのか、どうやって治療をしていたのかをお話していきます。
私と同じように、多汗症に悩まされている方の救いに少しでもなれば嬉しいです。
Contents
多汗症とは?汗っかきとは何が違うの?
多汗症についてまったく知らない方もこの記事を読んでいるかもしれません。だからまずは、多汗症という病気について軽く触れておきましょう。
多汗症とは、読んで字のごとく「汗を多くかく病気」です。ただし、ただの汗っかきとは違います。まったくもって違います。
多汗症は異常な発汗を特徴とする疾患。通常の方であれば「暑いから汗をかく」のですが、多汗症の場合は「じっとしていても汗をかく」のです。熱くても寒くても関係なく汗が噴き出します。
ここでは、私の多汗症との戦いについて書いていきたいので、多汗症そのものの原因などについて詳しくは書きません。
ただ、多汗症は「暑くても寒くても、じっとしていても多量の汗をかく」ということだけ知っておいてください。
多汗症になった16歳を境に人生が変わった
私はもともと、そこまで汗をかく人間ではありませんでした。真夏に自転車を30分ほどこいでも、じんわり汗ばむ程度です。
そこまで汗をかく人間じゃなかったのに16歳になったある日、私は多汗症になってしまいました。
「なんだかおかしいな」から始まった多汗症
「あれ?なんだかいつもと様子が違う」
そう感じたのは高校で授業を受けている最中。妙に体に熱がこもってほてるような感じがしたのです。
じっとしているのに体が熱い。
まるで体の中に熱がこもって、外に出れずにどんどん体温が上がっているような感じ。
しばらく経っても体の熱は静まりません。それどころか、どんどん熱がこもってじんわりと汗が出てきます。
「ん?体調がよくないのかな?」
このときはまだ“多汗症”という言葉も知らなかったので、とくに気にすることなく「ただの体調不良」と片付けてしまいました。
悪化する多汗症の症状
この日を境に、私はしょっちゅう体に熱がこもってじんわり汗をかいてしまう症状に悩まされるようになりました。
今思えば、このころの多汗症の症状はまだまだ軽度。「じんわり」だけで済むなんて今思えば羨ましい限りです。
日を重ねるうちにどんどん症状は悪化していき、ついには「じんわり」なんて可愛い言葉では済まされないほど汗をかくようになってしまいました。もちろん、普通に教室で椅子に座って授業を受けているだけでです。
どれくらい汗をかくようになったのかというと、「噴き出る」くらいには汗をかいていました。皮膚からにじみ出る汗が肌の上で大きな固まりになって、ボトボトと垂れ落ちていく。
ただそこにじっと座っているだけなのに、まるで真夏の炎天下に全力疾走でもしたかのような汗をかくのです。
多汗症という病気を認知する
じっとしているのに、ボトボトと垂れ落ちるくらいの大汗をかくのは明らかに異常です。
「なんでこんなに汗をかくんだろう?」
「私の体はどうなってしまうんだろう?」
不安というもやが、私をまるっと包み込んでしまったかのような気分でした。不安から少しでも逃げたい、指先だけでもいい、とにかくこの気持から逃れたい___。
そうだ、病院に行こう。
でも何科に行けばいいの?
汗を大量にかく病気なんて聞いたことがなかったので、ひたすらネットでこういう病気がないのかを検索しました。調べて調べて、とにかく調べてようやく見えてきた多汗症という病気。
きっと私は多汗症なんだな、と病名を知ったと同時に「多汗症の有効な治療法がない」という事実もこのときに知ってしまいました。
多汗症の治療のために病院へ行くものの・・・
多汗症の治療はいくつかの病院で受けられることがわかりました。
- 内科
- 皮膚科
- 精神科
この中から私は内科と精神科に足を運びました。
意を決して内科に行く
最初にかかったのは自宅の近くにある内科です。ここは漢方薬での治療を行っている病院。
多汗症について調べているうちに、漢方薬での治療が効果的なケースもあることを知っていた私にとって、この内科は希望の星のような存在。
「少しでも良くなってくれたら・・・。」
そんな思いで病院に行きました。今はさらっと「行きました」なんて書いていますが、多汗症の症状がピークだった当時は、どこかへ出かけることがとてもツライことだったのはいうまでもありません。
病院の待合室や診察室で汗を大量にかいて変な目で見られるかもしれない。
汗が気になって先生とうまく話せないかもしれない。
でも行かないと多汗症は治らない・・
多汗症を治したい、でも病院には行きづらい、そんな葛藤の末ようやく病院に足を運んだのです。
他の病気が原因で多汗症になっている可能性もある
多汗症は、本当に多汗症という病気を発症している場合もありますし、他の病気が原因で多汗症の症状が出ていることもあります。
まずは他に何か疾患がないのか、検査をします。このとき私は「むしろ何か病気が見つかってくれたほうが嬉しい」と思っていました。
他の病気が原因なら、その治療をすれば多汗症の症状はおさまります。もし何も疾患がなかったら、治るかどうかもわからない多汗症の治療を始めることになってしまうのです。
血液検査の結果・・・・
とくに何も疾患はありませんでした。
「そっか、何もないんだ。じゃあこのまま一生、多汗症と付き合わなきゃいけないんだ・・・」とひどく落胆したのを今でも覚えています。
漢方薬で多汗症の治療を始める
多汗症の症状を少しでも抑えるために、また、これで治るかもしれないというわずかな希望のために漢方薬での治療を始めました。
これまでに飲んだ漢方薬は何種類かあります。
- 柴胡加竜骨牡蛎湯
- 防已黄耆湯
- 黄連解毒湯
覚えているのはこれくらいですかね。それぞれ2ヶ月以上は飲んでいました。
漢方薬での治療を始めたものの症状は良くならず
私自身、漢方薬で多汗症の症状がよくなる方と、何も変わらない方がいるのは知っていました。だから期待していなかった、と言えば嘘になりますが、漢方薬を飲んで絶対に治るなんてちっとも思っていません。
ただ、少しでも症状がよくなれば・・・。
そんな思いでひたすら毎日、漢方薬を飲み続ける日々。しかし一向に症状は良くなりません。
授業中、私1人だけ顔面汗まみれ。
誰かに見られていないか心配でたまりません。
汗だくの私を見て、「暑くもないのに、なんでアイツあんなに汗だくなの?」と思わないはずがないですよね。
絶対に汗をかいているのを周りに見られたくない・・。
多汗症の発作が出ているときは少しでも汗が周りに見えないように髪の毛で顔を隠すようにしていました。
眠くもないのに、授業中でも真下を向いて顔を上に上げないようにしていました。
ときには寝たふりをして顔を完全に隠していました。
漢方薬だけでは効かないので抗不安薬や汗止めの薬も貰う
結論から言いまして、私にはあまり漢方薬での治療は効果がありませんでした。でもすべての多汗症の方に漢方薬が効かないわけではないので、そこだけは勘違いしないでください。
さまざまな多汗症体験記を読んだのですが、漢方薬でかなり症状が落ち着いた方もいらっしゃいます。たまたま私に漢方薬が合わなかっただけです。
漢方薬じゃ思うように効果が出ないと分かったのは、漢方薬の服用を始めて1年位経ったころですね。いろんな漢方薬を2ヶ月ずつくらい飲んで、結果としてどれもあまり効果がなかったのです。
だから次に精神科へ向かいました。
多汗症の方ならわかるかと思います。
汗をかきそう→汗をかいてきた→やばい汗が止まらない→もっと汗が噴き出る
多汗症の発作が起こると完全に悪循環にはまります。「汗をかいたヤバイどうしよう」という気持ちが余計に汗をかく原因になってしまうんですね。
こういった悪循環に「抗不安薬」がきく場合もあると知ったので精神科へ行ってみたのです。このときは高校3年生のときですね。
何種類かのお薬を貰いまして、結果としては少しだけ症状は和らぎました。お薬が効いていたのか、お薬を飲んでいる安心感からかはわかりませんが、ほんの少しだけ発作が起きにくくなりました。
多汗症が私にもたらしたこと
正直、私は多汗症によって人生を変えられました。変えられた人生のまま私はまだ生きています。
なんで多汗症になってしまったの?
なんで私なの?
今でもそう思います。
成績がガタ落ち
高校に入学した当初、そこそこ成績はよいほうでした。一番いいときで、300名近くいる学生の中でテストの成績順位は一桁。クラスでの成績も上位3位には必ず入っていましたね。でも、これは多汗症になる前の話。
多汗症を発症してからは授業にはまったく集中できません。授業時間は常に汗との戦いです。あまりに汗が止まらないときは授業を抜け出すことも何度もありました。
学校を休むことだってありました。
その影響で高校を卒業するころは後ろから数えたが早いくらいの成績に。もったいないですよね。病気のせいでここまで成績が落ちるなんて。
将来の夢を変えた
高校に入学した当時、私は学校の先生になると決めていました。入学当時の時点で國學院大學に入って国語の勉強をしこたまして教員免許を取ると決めていたのです。
この夢ももちろん多汗症によって叶わぬ夢に・・・。じっとしていても大量に汗をかく人間が人前に立って授業をできるはずがありません。多汗症の私には教員になることは不可能だったのです。
だから私は教員になることをやめました。
目標を失いどこの大学に行こうか迷っているときに、母親から「薬剤師って楽しそうじゃない?」と言われたのでなんとなく薬学部を受験。幸運にも合格したので薬学部に通うことに。
高校3年生のときは「いっそ薬について勉強して、多汗症を克服してやる」と思っていましたね。それくらい私の人生は、多汗症によってめちゃくちゃにされました。
多汗症を発症してから10年経った今
一番つらかったのは、間違いなく高校生のころです。高校って、びっくりするくらい冷房がきいていませんし、制服も決まっていたので、多汗症の人にとってはとても酷な環境なんです。
大学に入っても多汗症の症状は治りませんでした。だけど服装も自由だし、高校のときよりも冷房がきいていたので前ほどはびっしょりと汗をかかなくなっていましたね。発作の頻度が格段に減りました。
授業も途中で抜けやすいので、汗をかいたら具合が悪いふりをしてトイレに行く。それが自由にできるだけでどんなに助かったことでしょうか。
大学を卒業して社会人になってからも多汗症は治っていません。しかし高校生のころと比べると驚くほど症状は緩和しています。
きっと大学に入って発作をあまり起こさなくなったことから、「汗をかいたらどうしよう」と不安に思うことが少なくなったせいでしょうね。少し心に余裕ができたとでも言いましょうか。
とにかく四六時中、汗のことを考えなくてよくなったことが多汗症の症状を緩和させてくれたように思います。
完治はしていませんが、汗について気にすることはあまりありません。みんなで集まるときや、葬儀なんかのときはさすがに今でも汗が心配になりますが幾分もマシです。
私の多汗症が緩和したのはおそらく「環境の変化」による「気持ちの変化」のせいだと思っています。
ただし、やはりたまには多汗症の発作が出てしまうこともあります。最近では一人で家にいるのに、脇が湿ってくるのが気になるようになりました。
まとめ
多汗症の何が大変かって、汗をかくことよりも、汗をかいている自分がどう見られているのかが気になって仕方がないということです。
大して暑くもないのにびっしょびしょになるくらい汗をかいていると「あの人大丈夫?なんであんなに汗をかいているの?」って思いますよね。
そう思いながらこっちを見ている視線が一番つらいんです。だからもし、あなたの周りに汗で悩んでいる方がいても決して笑ったりバカにしたりしないでください。
「大丈夫?」の声掛けも必要ありません。ただただ、多汗症について理解してほしい、知ってほしい、それだけが切実な願いです。
ただただ、私の経験を書いただけの記事ですが、これが同じように多汗症に悩む方の助けになれば嬉しく思います。