多汗症のつらいところは、多汗症の治療をしたいのになかなか病院に行けないところ。
「病院に行きたいけど、診察のときに大量に汗をかいてしまうかもしれない。」
「周りの人に多汗症だってバレたくない。」
こんな思いが働いてしまって、なかなか病院へ足を運べないのです。この気持ち、とってもよくわかります。なぜなら私自身が、同様の理由で病院に行くのをためらっていた時期があるから。
病院に行きにくいなら、市販薬を使えばよいのです。多汗症に使われるお薬の多くは、市販でも手に入ります。それなら市販薬を使おうって思いますよね。
しかしここでまた一つ、問題が生じてしまいます。それはどのお薬を使ったらいいのかがわからないということ。
でも安心してくださいね。多汗症でつらい時期を過ごし、現在は薬剤師をしている私が、市販薬のオススメをわかりやすくご紹介していきます。
Contents
多汗症とは?主な原因や症状
多汗症を発症すると、常に汗を気にして生活するようになってしまうため、学校に行くのが億劫になったり電車に乗るのに勇気がいったりと日常生活にさまざまな影響をもたらします。
多汗症の主な原因
多汗症の原因は、残念ながらはっきりとはわかっていません。何か疾患があって発症することもありますが、ほとんどは原因がわからないまま発症します。
多汗症の原因として考えられるものは、次の3つです。
- ほかの疾患
- 遺伝
- 自律神経の乱れ
多汗症の症状が出る代表的な疾患として、甲状腺機能亢進症が知られています。甲状腺のあはたらきが活発になりすぎることで体が常にオーバーヒートしている状態になり、汗をかきやすくなるのです。
そのほか、遺伝や自律神経の乱れも多汗症の原因となります。
多汗症の症状
多汗症になると、脇や顔、頭から大量の汗をかくようになります。
体を動かしたときだけではなく、じっとしていも、涼しい部屋にいても汗をかいてしまうのが特徴です。
汗のことを意識すればするほど発汗量が増え、自分一人だけ汗だくになってしまうこともあるでしょう。
多汗症かどうかセルフチェックする方法
日本皮膚科学会では、次の項目に2つ以上あてはまれば多汗症と診断されるとしています。
- 最初に症状がでるのが 25 歳以下であること
- 対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- それらによって日常生活に支障をきたすこと
多汗症は何科を受診するべき?
「多汗症かな?」と思ったら、まずは皮膚科を受診してみましょう。皮膚科に行けば診察のあと、飲み薬などを処方してもらえます。
多汗症の治療を積極的に行っている皮膚科であれば、イオントフォレーシスでの治療も可能です。
もし日頃から多汗以外に「疲れやすい」「動悸がする」「手足が震える」などの症状もあれば、内科を受診してみてください。
これらの症状は、甲状腺機能亢進症の典型的な症状です。甲状腺機能亢進症だった場合は飲み薬によって治療できます。
多汗症の治療薬のうち病院で主に使われるもの
病院に行ったらどのようなお薬を使って、どのような治療をしていくのか気になりませんか?いくら市販で多汗症のお薬が買えると言ったって、あまりに病院のお薬とかけ離れたものは使いたくありません。
私だってそう思います。ということで、まずは病院で使われるお薬について軽く触れておきます。
病院で出される多汗症のお薬には以下のようなものがあります。
- 漢方薬
- 抗不安薬
- 抗コリン薬
- 自律神経を整えるお薬
それぞれについて、見てみましょう。
漢方薬
漢方薬は、多汗症の治療薬の中ではかなりメジャーです。柴胡加竜骨牡蛎湯や黄連解毒湯なんかがよく出されますね。数ヶ月単位で服用を続けることで症状がとても改善されたという方もいます。
抗不安薬
ストレスや不安、緊張によって多汗症の発作が起きる方には抗不安薬が処方されることもあります。私はこれでほんの少しだけ、多汗症の症状がやわらぎました。
抗コリン薬
抗コリン薬は強制的に体が汗を出しにくい状態にするお薬。常用には適しておらず、いざというときのために処方されることが多いかと思います。
私はプロバンサインというお薬をいくつか処方してもらったのですが、確かに汗の量はかなり減りました。でも口の乾きがすごくて、とてもじゃないけど毎日飲めるお薬ではないと感じましたね。
自律神経を整えるお薬
多汗症の治療に自律神経を整えるお薬もよく処方されます。有名所だとグランダキシンですね。私の場合、効果はいまいちわかりませんでした。
市販で買える多汗症の治療薬
病院で処方されるお薬には漢方薬や抗不安薬など、いくつか種類があります。このうち市販でも買えるお薬は
- 漢方薬
- 抗コリン薬
あたりです。これに加えて、抗不安薬に似ている鎮静剤も市販で手に入れられます。ただし一つ注意がありまして、市販薬には多汗症に使えると謳っている抗コリン薬はありません。
これはとっても残念なのですが、どれも蕁麻疹や鼻炎薬しか適応がないのです。風邪薬や鼻炎のお薬を飲むと口が乾いたり便秘になったりした経験はありませんか?
この副作用を利用して汗を止めるのが抗コリン薬です。
多汗症に使える市販薬は
- 漢方薬
- 鎮静剤
の2つ。抗コリン薬は適応に多汗症がないためここでは除外します。
多汗症に使える市販薬:漢方薬
まずは漢方薬からご紹介していきます。漢方薬は汗を大量にかいてしまう体質そのものにアプローチして、多汗症の治療をしていくお薬。お薬が体質に合えば症状が大きく軽減されることもあります。
体質によって適切な漢方薬が違いますので、どれが自分に合っているのかをここで見つけてみましょう。
前もって、注意すべきことを挙げておくなら、多汗症の治療に用いられる漢方薬は即効性は期待できないということ。早くて2週間、ゆっくりな方だと2ヶ月くらい飲み続けて効果が表れてきます。
治療効果が出るまでずっと市販薬を買い続けるのは、お金がどうしてもかかってしまいます。なので最初は市販薬を使ってみて、それで少しでも多汗症の症状が落ち着いたなと感じたら病院に行ってみるとよいかとおもいます。少しでも症状が落ち着いた状態で病院に行ったほうが、心も落ち着かせて診察を受けられるでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯は、多汗症の治療にとても多く用いられる漢方薬。私も飲んだ経験があります。
- 精神的な不安やストレスで汗をかきやすい方
- 比較的、体力がある方
- イライラしやすい方
柴胡加竜骨牡蛎湯は、多汗症の方の中でもとくに精神的要因によって汗をかきやすい方に向いています。精神的なストレスや不安は、神経を高ぶらせたり体の機能に影響したりすることで発汗を促してしまうのです。
「汗をかいたらどうしよう」と思えば思うほど脈が速くなって汗をかいてしまう、そんな方に向いている漢方薬といえます。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
防已黄耆湯も、多汗症によく用いられます。こちらも服用経験あり。防已黄耆湯はダイエット用のお薬としても販売されているので、他の漢方薬と比べたら気軽に購入できるお薬です。
- むくみやすい方
- 肥満ぎみの方
- 色白で疲れやすい方
防已黄耆湯は、体にたまっている余計な水分を外に出してあげる漢方薬。いらない水分がたくさん溜まっていると、それが汗として出ようとするので、たくさん汗をかいてしまいます。
汗かきでぽっちゃりしており、体の表面が柔らかいような、水分が多く溜まっている方に適している漢方薬です。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
黄連解毒湯は皮膚疾患の治療に多く用いられる漢方薬として有名です。皮膚疾患のお薬と聞くと、多汗症には効かないような気にもなってしまいますが、そんな心配はいりません。
病院でも多汗症の治療のためによく処方されています。ちなみに、黄連解毒湯も私は服用した経験あり。
- 体に熱がこもりやすい
- 比較的、体力が充実している
- のぼせやすい
黄連解毒湯には、体にこもっている熱を冷ましてあげる働きがあります。だから多汗症にも用いられるんですね。体に熱がこもると当然「暑い」と感じますので、結果として汗をかくことにつながります。
熱を体から逃がすことができれば、汗の量も減らせるというわけです。
こちらの記事では3種類しか紹介していませんが、下記の記事ではさらに詳しく8種類の漢方薬について説明していますので、ぜひこちらを参考にしてください。
https://takansyo.net/kanpouyaku/多汗症に使える市販薬:鎮静剤
精神的な要因で汗をかいてしまう場合は、気持ちを落ち着かせるお薬が有効な場合があります。実際に私も、病院で処方された抗不安薬によってほんの少しですが症状がマシになりました。
市販には病院で貰えるのと同じ抗不安薬はありませんが、鎮静剤という心を落ち着かせてくれるお薬があります。
多汗症の方によくある「汗をかいたらどうしよう」という気持ちによって汗をかいてしまう悪循環。どうしようという気持ちや、周りの目が気になって余計に汗をかいてしまう方には鎮静剤が効果を成す可能性があります
伊丹製薬 ウット 12錠
ぶっちゃけ、ウットはドラッグストアで購入するよりもネットで購入した方がかなり安いです。ネットだと半額くらいですね。
- ブロモバレリル尿素
- アリルイソプロピルアセチル尿素
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
ウットには緊張している神経を鎮めて、気持ちを楽にしてあげる成分が含まれています。それに加えて抗ヒスタミン薬であるジフェンヒドラミン塩酸塩も配合されていますね。
ジフェンヒドラミン塩酸塩は蕁麻疹や鼻炎などにも使われる成分。副作用によって起こる眠気を利用して、気持ちを落ち着かせてくれます。
ウットに含まれているブロモバレリル尿素は、他に鎮痛剤にも含まれていることがあります。他にブロモバレリル尿素が含まれているお薬を同時に飲んでしまうと副作用が起きてしまうことがあるので、他のお薬を飲むときは配合成分に気をつけましょう。
佐藤製薬 パンセダン 24錠
パンセダンもウットと似ていて、ストレスやイライラ、緊張を和らげてあげるお薬です。配合成分はすべてハーブを使っているので、「鎮静剤はちょっと怖いな」と思っている方でも飲みやすいのではないでしょうか。
- パッシフローラエキス
- セイヨウヤドリギエキス
- カギカズラエキス
- ホップ乾燥エキス
どれも鎮静作用を持つハーブ。ウットは眠気が出やすいのですがパンセダンは出ません。鎮静剤は飲みたいけど眠気が出たら困るという方はパンセダンを選ぶとよいでしょう。
多汗症に使える市販薬:抗コリン薬
最初にお断りしておきますが、市販の抗コリン薬を多汗症のために使うのは適応外となります。そのため万が一、大きな副作用が起きたときは副作用被害救済制度の対象となりません。そこだけ注意してくださいね!
レスタミンコーワは主成分としてジフェンヒドラミンを配合した蕁麻疹や鼻炎、アレルギー用の飲み薬です。
ジフェンヒドラミンには抗コリン薬作用があり、汗の量を抑える働きがあるため、実は多汗症に悩む方が汗のために飲まれていることも多いお薬となります。
眠気が出やすいので、高所での作業や乗り物の運転は気をつけてください。
番外編:多汗症にオススメの“パースピレックス”
お薬を飲むことで、汗を抑えていく方法と併用して行いたい対策が、物理的に汗を止めること。内側からお薬で汗のケアをし、外側からも汗のケアをすることで少しでも汗の量を抑えようという作戦です。
私ももちろんこの作戦でずっと多汗症と戦ってきました。多汗症がふつうの制汗剤で抑えられることはまずありません。たくさん汗をかくことによる臭い対策はできたとしても、多汗症の汗を止めるほどの効果は発揮してくれないのが現実。
どうにかして汗を止められないか、探して探して見つけたのがこちらのパースピレックス(デトランスα)です。
パースピレックスの脇用(ストロング)は、塩化アルミニウムを最大濃度の25%も配合した塗り薬です。塩化アルミニウムの濃度は高ければ高いほど効果も高いのですが、市販だと10%前後のものばかり。
デトランスα以外の商品だと高くても20%のものが最大でした。しかしデトランスαのストロングなら、塩化アルミニウムが25%も配合されているので汗止めの効果も抜群です。
- 出荷数が100万本を突破
- デトランスαを試した方の95%が定期購入を検討
- リピート率は92%以上
- 市販品では最大となる塩化アルミニウムを25%配合
通常価格は4,800円と少し高いのですが、楽天市場やAmazonなどでは2,000円代&送料込みでしかも単品での購入ができます。
その他の多汗症の治療方法
市販薬での多汗症治療は、飲み薬と塗り薬が基本です。もしほかの治療を試してみたい、もっと確実に多汗症を治したいということであればミラドライがおすすめです。
ミラドライは、マイクロ波を使って汗腺を破壊します。汗腺そのものをターゲットに治療するため、ミラドライは多汗症の症状を半永久的に抑えられることが大きな特徴です。
何年も飲み薬や塗り薬を続けるのが苦痛な方や、多汗症を根本からしっかり治療したい方は、ぜひミラドライを検討してみてください。
まとめ
市販でも多汗症の対策は十分にできます。主に漢方薬をメインとした治療になりますので、ここでご自分に合う漢方薬をぜひ見つけてください。
このように同じ多汗症でも体質によって選ぶべき漢方薬が異なるので要注意。この他にウットやパンセダンなどの鎮静剤、それからオドレミンなどを使うことで汗を抑えていくことができるでしょう。
多汗症はこうすれば治る!という方法がないのがつらいところですが、合うものが見つかれば症状がとても落ち着きます。
つらいこともたくさんあるかもしれませんが、私と同じように多汗症で悩まれている一人でも多くの方に、この記事が役に立ってくれることを祈っています。